インプラント

インプラント治療後のセルフケアと定期メンテナンスについて教えて

インプラント治療後のセルフケアと定期メンテナンスについて教えて

高槻クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 髙野 祐

インプラント治療でしっかりとした人工の歯が出来ると、歯がなかったことを全く意識しない、歯を失う前の状態にほぼ戻る事が出来ます。しかしインプラントを長持ちさせるためには、治療後のセルフケアと歯科医院での定期健診が重要になりますので、ごせつめいします。

インプラント治療後のセルフケアについて

インプラント治療後にセルフケアと定期メンテナンスが必要であることがお分かりいただけましたでしょうか? では、インプラント周囲炎を起こさないためのセルフケアと、歯医者での定期健診はどのように行われるのでしょうか?

セルフケアでも、定期健診でも、まずはお口の中の細菌を除去して減らすということが目的になります。

セルフケアの中心は歯ブラシでのブラッシングですが、ブラシの毛先が届かない歯と歯の間や歯と歯茎の溝の部分は、デンタルフロスや歯間ブラシ、ワンタフトブラシなども使って丁寧に歯垢を除去します。

インプラント治療後の定期メンテナンスについて

インプラント周囲炎の治療では、細菌を除去するために、専用の器具や機械を使ってインプラントの周囲に付着している歯垢をきれいにしていきます。

薬剤でうがいをしたり、インプラントと歯茎の間に薬剤を入れたりする方法もありますが、一番効果的なのは細菌の棲みかである歯垢や歯石を物理的に取り去ってしまうことです。

当院ではエアフローという器械でメンテナンスを行っています。エアフローは専用パウダーを歯に吹き付けると同時にジェット水流で洗い流し、歯垢と共に細菌をきれいに除去します。

定期健診の頻度は?

定期健診は3~4ヶ月おきくらいに受けていただくと、新たに歯に付着した歯垢が歯石になる前に除去することが出来るため、周囲炎の予防に効果的です。

インプラントの上部構造を外して洗浄する等のメンテナンスは、担当医の判断によって必要時に行い、別途費用がかかります。なお、接着式の上部構造は外すことが出来ません。

インプラントは歯周病に弱い

インプラントの構造

インプラント治療後はもう虫歯や歯周病の心配はないと安心してセルフケアをおろそかにしていませんか? インプラントはチタン製の人工歯根とセラミックの被せ物で出来ていますので、虫歯菌の出す酸によって溶かされる心配はありません。

しかし、インプラント体や被せ物は歯茎や骨と接しているため、歯周病と無関係というわけにはいきません。実はインプラントは歯周病には弱く、インプラント治療後に歯周病にかかり、インプラントがグラグラになってしまう方も多くおられます。

インプラントの周囲の組織が歯周病になることをインプラント周囲炎といい、インプラントがダメになってしまう原因の大多数の方が、インプラント周囲炎によるものです。

インプラント周囲炎とはどんな病気?

インプラント周囲炎は歯周病に似ており、歯周病は天然歯と周囲の歯茎や骨に炎症が起こりますが、インプラント周囲炎はインプラントと周囲の組織の炎症のことです。

一度インプラント周囲炎にかかってしまうと、とても進行が早く、あっという間に悪化してしまいます。その理由は、インプラントは人工の歯根と被せ物ですので、天然歯とくらべて血管や神経が通っておらず、炎症への抵抗力が弱いからです。

更に、周囲炎が進行しても歯周病のような自覚症状が少なく、本人が気づきにくいということがあげられますので、周囲炎をごく初期の状態で見つけるためには、歯科医院での定期健診が必須になります。

歯周病が進行した時の自覚症状は、歯茎の腫れ、歯茎からの出血、歯がグラグラと動揺するなどがあげられますが、インプラント周囲炎ではこれらの症状が出るのはかなり周囲炎が進行してからになり、気づいた時には手遅れということにもなりかねません。

インプラント周囲炎を起こす原因は?

インプラント模型

インプラント周囲炎を起こす原因は、歯周病の原因と似ており、インプラントの表面に付着した歯垢(プラーク)やバイオフィルムなどの細菌の塊です。毎日丁寧に歯磨きしていても、歯と歯の間や歯と歯茎の隙間に残ってしまった食べカスや汚れが時間の経過によって歯垢となり、その中で細菌が増え続けます。

歯と歯茎の間の僅かな隙間を歯周ポケットといいますが、健康な方は歯周ポケットの深さが1~2ミリです。3ミリになると、歯肉炎があらわれはじめ、歯周病治療が必要になります。4ミリを超えると、歯周ポケットに歯垢が溜まりやすくなり、歯磨きで落とすのが難しくなってきます。

歯周病の原因菌は空気を嫌うため、歯周ポケットの奥へとどんどん侵入していき、歯周ポケット内は歯周病菌の出す毒素によって炎症を起こして歯周組織が壊され、どんどん深くなっていきます。

歯周病菌がインプラントを支えている顎骨の部分にまで達してしまうと、骨が破壊されてインプラントがグラグラになり、やがてインプラントが抜けてしまいます。

口腔内環境を良くすることが重要

口腔内は、異なる多くの種類の細菌が共存しており、そのバランスはお口の健康に大きく関係しています。このバランスが乱れると、細菌が増殖しやすくなり、歯周病や虫歯の原因となる可能性があります。

口腔内に異常な細菌の増加が見られると、それがインプラントの周囲に広がり、インプラント周囲炎を引き起こす可能性があります。逆に口腔内が清潔に保たれていれば、インプラントの寿命を延ばすことにつながります。

このため、インプラント自体のケアが重要なのはもちろんですが、全体的な口腔ケアも重要です。歯磨きだけでなく、デンタルフロスの使用や口腔洗浄剤の使用、偏りのない栄養の摂取、十分な水分摂取、定期的な歯科健診などによって口腔内の環境を健康に保つことが、インプラントだけでなくお口全体の健康に繋がります。

また、タバコや過度のアルコール摂取は口内のバランスを乱すため、避けた方が望ましいです。

インプラント治療後のセルフケアと定期メンテナンスに関するQ&A

インプラント治療後のセルフケアはどのように行うべきですか?

インプラント治療後のセルフケアは、歯ブラシでのブラッシングが中心ですが、歯と歯の間や歯と歯茎の溝はデンタルフロスや歯間ブラシを使用して歯垢を丁寧に取り除くことが重要です。適切なセルフケアを行うことでインプラント周囲炎を予防しましょう。

インプラント周囲炎を防ぐために注意すべき点は何ですか?

インプラント周囲炎を防ぐためには、インプラントの表面に付着した歯垢やバイオフィルムなどの細菌の除去が重要です。歯周ポケットの深さが増すと歯垢が溜まりやすくなるため、デンタルフロスや歯間ブラシを使用して隙間を清潔に保つことが大切です。

インプラント周囲炎の定期メンテナンスの頻度はどれくらいですか?

インプラントの定期メンテナンスの頻度は、通常の予防歯科のメンテナンスの頻度と同じ位で良いでしょう。当院では定期健診は3~4ヶ月おきくらいでお受けいただいています。この頻度で受けることで新たな歯垢が歯石になる前に除去できますので、歯周病やインプラント周囲炎の予防に効果的です。

まとめ

歯のキャラクター

インプラント治療後のセルフケアと定期健診の必要性とその内容についてご説明しました。インプラント周囲炎にかからないようにすれば、インプラントはかなり長持ちしますので、毎日ていねいにケアしていきましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 高槻クローバー歯科
院長 髙野 祐

2013年 岡山大学 歯学部卒業。2014年 岡山大学病院臨床研修終了

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高槻クローバー歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック