電動歯ブラシと手磨きはどちらがいい?違いと選び方を歯科医が解説

高槻クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 髙野 祐

電動歯ブラシと手磨きはどちらがいい?

結論からいうと、電動歯ブラシと手磨きのどちらかが、すべての人にとって絶対に優れているわけではありません。

電動歯ブラシは少ない手の動きで効率よく歯垢を落としやすい一方、手磨きには細かな部分を自分で調整して磨きやすいというメリットがあります。大切なのは「高性能な歯ブラシを使うこと」ではなく、自分が磨き残しやすい場所まできちんと清掃できる方法を選ぶことです。

この記事を読むとわかること

  1. 電動歯ブラシと手磨きの違い
  2. 電動歯ブラシが向いている人・手磨きが向いている人
  3. 電動歯ブラシのメリットとデメリット
  4. 手磨きでも十分に歯をきれいにできるのか
  5. 電動歯ブラシを使うときの注意点
  6. フロスや歯間ブラシを併用する必要性

歯ブラシを買い替えようとしている方や、「今の磨き方で本当に大丈夫?」と気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

 

電動歯ブラシと手磨きは結局どちらがいい?

電動歯ブラシと手磨きは結局どちらがいい?の図解

正しく使えるのであれば、電動歯ブラシにも手磨きにもそれぞれメリットがあります。ただし、歯磨きが苦手な方や短い時間で効率よく磨きたい方には、電動歯ブラシが役立つ場合があります。

電動歯ブラシには振動式、音波式、回転式などがあり、ブラシ部分が自動的に動いて歯垢を除去します。そのため、自分の手だけで細かな動きを作る必要がありません。

一方、手磨き用の歯ブラシは、自分でブラシの動きや力加減を細かく調整できます。ヘッドのサイズや毛の硬さなどの選択肢も多く、自分の口に合うものを探しやすい点が特徴です。

研究をまとめたCochraneレビューでは、電動歯ブラシは手磨きと比較して、歯垢や歯肉炎を減少させる点で一定の優位性が認められています。ただし、「電動歯ブラシなら適当に当ててもきれいになる」という意味ではありません。ブラシが歯に当たっていないところの歯垢は落とせないためです。

まず、電動歯ブラシと手磨きの主な違いを整理してみましょう。
どちらが優れているかではなく、「自分にとって使いやすいか」という視点で比べることが大切です。

比較項目 電動歯ブラシ 手磨き
歯ブラシの動き 自動で振動・回転する 自分の手で動かす
歯垢除去 効率よく落としやすい 磨き方によって差が出やすい
力加減 押しつけすぎに注意 自分で調整しやすい
価格 比較的高い 比較的安い
携帯性 ややかさばる 持ち運びやすい
操作 歯に沿わせて移動する 細かく動かす必要がある

どちらを使ったとしても、重要なのは歯垢が付きやすい場所に毛先をきちんと届けることです。高価な電動歯ブラシを購入したからといって、自動的に磨き残しがゼロになるわけではありません。

電動歯ブラシと手磨きの差以上に、「どこに毛先を当てるか」が歯磨きの結果を左右します。

電動歯ブラシにはどんなメリットがある?

電動歯ブラシの大きなメリットは、細かな振動や回転を機械が行ってくれるため、少ない手の動きでも効率的に歯垢を除去しやすいことです。

手磨きでは、歯ブラシを細かく動かしながら1本ずつ磨かなければなりません。一方、電動歯ブラシでは歯にブラシを適切に当て、少しずつ移動させることで磨くことができます。

そのため、次のような方には使いやすい可能性があります。

  1. 歯磨きがあまり得意ではない方
    → 細かく歯ブラシを動かすのが苦手な場合でも、電動歯ブラシの振動を利用して磨くことができます。
  2. 毎日の歯磨きを効率化したい方
    → 忙しい朝などでも、一定の動きで歯を磨きやすいことがメリットです。ただし、急いで口全体をなぞるだけでは十分ではありません。
  3. 手を細かく動かしにくい方
    → 握力や手の動きに不安がある方にとって、電動歯ブラシは歯磨きを補助する道具になることがあります。
  4. いつも同じ場所に磨き残しが出る方
    → 手磨きだけではうまく清掃できない部分について、電動歯ブラシが選択肢になるケースがあります。

参考記事でも、手磨きで十分な効果が得られず、特定の場所に歯垢が残りやすい方は電動歯ブラシが適している可能性が紹介されています。

電動歯ブラシは「歯磨きを自動化する機械」というより、「手の動きを補助してくれる道具」と考えるとわかりやすいでしょう。

手磨きだけでもきれいに磨ける?

適切な歯ブラシを選び、正しい方法で丁寧に磨けているのであれば、手磨きでも十分に歯垢を落とすことは可能です。

電動歯ブラシが普及しているため、「普通の歯ブラシでは不十分なのでは?」と思う方もいらっしゃいますが、必ずしもそうではありません。

手磨きには、次のようなメリットがあります。

  1. 歯ブラシの種類が豊富
  2. 価格が比較的安い
  3. 外出先にも持ち運びやすい
  4. 毛先を当てる位置を細かく調整できる
  5. 自分で力加減を調節しやすい

特に歯並びが複雑なところや奥歯の裏側などでは、コンパクトな歯ブラシやワンタフトブラシを使い分けることで、細かな部分まで清掃しやすくなります。

一方で、手磨きは「自分で歯ブラシを正しく動かす」という技術が必要です。

電動歯ブラシと手磨きには、それぞれ向いている人がいます。
毎日の生活や歯磨きの癖から考えてみましょう。

こんな方 おすすめしやすい方法
歯ブラシを細かく動かすのが苦手 電動歯ブラシ
短い時間でも効率よく磨きたい 電動歯ブラシ
力を入れてゴシゴシ磨く癖がある 圧力センサー付き電動歯ブラシなども選択肢
細かな場所を自分で調節して磨きたい 手磨き
費用を抑えたい 手磨き
旅行・外出が多い 手磨き、または携帯型電動歯ブラシ

ここで大切なのは「電動か手磨きか」という二択にこだわりすぎないことです。自宅では電動歯ブラシ、外出先では手磨きというように、場面によって使い分けても問題ありません。

手磨きで十分に磨けている方が、無理に電動歯ブラシへ変更する必要はありません。

電動歯ブラシなら歯磨き時間を短くしてもいい?

電動歯ブラシは効率よく歯を清掃できますが、「短時間で適当に磨いても大丈夫」という意味ではありません。

電動歯ブラシを使い始めると、振動が強いため「磨けている感じ」が得られやすくなります。

しかし、ここには注意が必要です。

たとえば奥歯の外側だけにブラシを当てても、内側や歯と歯の境目まで自動的にきれいになるわけではありません。

次の部分は特に意識してブラシを当てましょう。

  1. 歯と歯茎の境目
  2. 奥歯の頬側と舌側
  3. 一番奥の歯の後ろ側
  4. 歯並びが重なっている部分
  5. 詰め物や被せ物の周囲

電動歯ブラシでは、手磨きのように大きくゴシゴシ動かすのではなく、基本的には毛先を歯面に当てながら少しずつ移動していきます。使用方法は製品によって異なるため、メーカーの説明も確認しましょう。

「何分磨いたか」だけでなく、「すべての歯面にブラシが当たったか」を確認することが重要です。

電動歯ブラシにもデメリットや注意点はある?

電動歯ブラシは便利ですが、強く押しつければ歯や歯茎に余計な負担をかけることがあります。また、本体や交換ブラシに費用がかかる点も考えておきたいところです。

特に注意したいのが、強い力で押しつける使い方です。

「振動が強いほど汚れが取れそう」と考えて歯に強く押し当てる必要はありません。適切な力で毛先を当てることが基本です。

日本歯周病学会では、電動歯ブラシと普通の歯ブラシのどちらが適しているかは、歯周病の進行程度や年齢、お口の状態などによって異なると説明しています。

便利さだけでなく、デメリットも知ったうえで選びましょう。
特に「買えば歯磨きが上手になる」と考えてしまうのは避けたいところです。

メリット デメリット・注意点
細かな振動を機械が行ってくれる 本体価格が高いことがある
効率よく歯垢を落としやすい 交換ブラシにも費用がかかる
手を細かく動かす必要が少ない 充電や電池が必要
タイマーなど補助機能がある製品もある 強く押しつけると歯や歯茎への負担になることがある
一定の動きで磨きやすい 当て方が悪ければ磨き残しは生じる

最新機能の多い製品を選べば、それだけでむし歯や歯周病を防げるわけではありません。自分にとって必要な機能かどうかを考えて選ぶことが大切です。

電動歯ブラシでは「よく動かすこと」より、「適切な位置に軽く当てること」がポイントです。

電動歯ブラシと手磨き、歯周病が気になる人にはどちらがいい?

歯周病が気になるからといって、必ず電動歯ブラシを選ぶべきとは限りません。歯茎の状態や磨き方に合わせて選ぶ必要があります。

歯周病対策で重要なのは、歯と歯茎の境目などに付着する歯垢を毎日の歯磨きでできるだけ除去することです。

日本臨床歯周病学会では、歯垢は多数の細菌などから構成され、歯に強く付着しているため、歯ブラシなどによる物理的な除去が大切だとしています。

つまり重要なのは「電動か手磨きか」という種類そのものより、「歯垢が残っている場所にブラシが届いているか」ということです。

歯茎から出血する、腫れる、歯が浮くような感覚がある場合には、自己判断で歯ブラシだけを変更するのではなく、歯科医院で状態を確認してもらいましょう。

歯周病対策では「高性能な歯ブラシ」より、「自分が磨けていない場所を知ること」が第一歩です。

電動歯ブラシと手磨きを併用するのはあり?

もちろん可能です。むしろ、場所や目的によって複数の清掃道具を使い分けるという考え方は合理的です。

たとえば、

  • 全体は電動歯ブラシ
  • 歯並びが重なったところはワンタフトブラシ
  • 歯と歯の間はデンタルフロス
  • 歯間が広いところは歯間ブラシ

という使い方もできます。

ここが、この記事で特にお伝えしたいポイントです。

「どの歯ブラシが一番優秀か」を探すより、「自分の口の中のどこに磨き残しがあるか」を知るほうが、歯を守るためには重要です。電動歯ブラシ1本ですべてを完結させようとする必要はありません。

歯磨きは「1本の万能な道具を探す」より、「場所に合わせて道具を使い分ける」と考えると上手くいきます。

電動歯ブラシを使えばフロスは必要ない?

電動歯ブラシを使っていても、デンタルフロスや歯間ブラシによる歯間清掃は重要です。

ここは勘違いされやすいところです。

電動歯ブラシは歯の表面を効率よく清掃できますが、歯と歯の間の狭い部分には、歯ブラシの毛先そのものが入りにくいことがあります。

日本歯科医師会では、歯ブラシだけでは歯と歯の間の歯垢を十分に落としにくいため、デンタルフロスなどを併用した歯間清掃を紹介しています。

「歯ブラシを何にするか」だけでなく、歯ブラシ以外の道具も含めて考えてみましょう。磨く場所ごとに得意な清掃道具は異なります。

磨きたい場所 使いやすい清掃道具
歯の表面 電動歯ブラシ・手磨き用歯ブラシ
歯と歯の間 デンタルフロス
歯間が広い部分 歯間ブラシ
一番奥の歯 ワンタフトブラシ
歯並びが重なった部分 ワンタフトブラシ・デンタルフロス

電動歯ブラシを高性能なものに替えるだけでは、歯と歯の間まで完全に清掃できるとは限りません。むしろ、現在使っている歯ブラシにフロスや歯間ブラシを追加したほうが、磨き残し対策として有効な場合もあります。

電動歯ブラシを使っていても、フロスや歯間ブラシの役割までなくなるわけではありません。

電動歯ブラシにはどのくらい費用がかかる?

手磨き用歯ブラシに比べると、電動歯ブラシは本体だけでなく、定期的な交換ブラシの購入費用も必要になります。

電動歯ブラシの価格は製品によってかなり幅があります。低価格の電動タイプから、音波式・回転式、圧力センサー、タイマー、スマートフォン連携などの機能を搭載した高価格帯の製品までさまざまです。

一方、手磨き用歯ブラシは比較的安価で、ドラッグストアなどでも簡単に購入できます。

ただし、「高い電動歯ブラシほど歯がきれいになる」と単純に考える必要はありません。

歯科医院で磨き残しを確認してもらい、

  • 今の歯ブラシで十分なのか
  • 電動歯ブラシが向いているのか
  • ヘッドの大きさは合っているか
  • フロスや歯間ブラシが必要か

まで確認したほうが、結果として自分に合った方法を選びやすくなります。

歯ブラシ選びでは本体価格ではなく、「毎日無理なく正しく使い続けられるか」まで考えましょう。

自分に合う歯ブラシはどう判断すればいい?

一番わかりやすい判断材料は、「どちらを使ったほうが磨き残しが少ないか」です。

電動歯ブラシ派か、手磨き派か。

この二択で考え始めると、「どちらが正解なのか」という話になりがちです。しかし口の中は一人ひとり違います。

歯並び、歯茎の状態、詰め物や被せ物の位置、手先の動かしやすさ、歯磨きにかけられる時間によって、適した方法は変わります。

おすすめしたいのは、歯科医院で磨き残しを確認してもらうことです。

たとえば、
「右下の奥歯だけいつも歯垢が残っている」
「前歯はきれいだけれど、奥歯の内側が磨けていない」
ということがわかれば、必要な対策も見えてきます。

電動歯ブラシに変更する、ヘッドを小さくする、ワンタフトブラシを加える、フロスを使うなど、具体的に改善できます。

日本歯科医師会も、歯科医師や歯科衛生士から自分に必要なセルフケアの方法についてアドバイスを受け、継続することを勧めています。
セルフケアとプロフェッショナルケア | 歯の学校 – 日本歯科医師会

「電動と手磨き、どちらが優秀か」ではなく、「自分の磨き残しを減らせるのはどちらか」で選びましょう。

まとめ|電動歯ブラシと手磨きは「自分に合うほう」を選ぼう

電動歯ブラシと手磨きには、それぞれメリットとデメリットがあります。

電動歯ブラシは自動的な振動や回転によって効率よく歯垢を除去しやすく、歯ブラシを細かく動かすことが苦手な方にも使いやすいのが特徴です。

一方、手磨きは価格が安く、歯の形や位置に合わせて細かな力加減や動きを調整しやすいという良さがあります。

そのため、すべての人に「電動歯ブラシのほうがいい」「手磨きのほうがいい」と言い切ることはできません。

そして、もう一つ忘れてはいけないのが、電動でも手磨きでも、歯ブラシだけでは届きにくい場所があることです。

デンタルフロス、歯間ブラシ、ワンタフトブラシなども上手に組み合わせながら、自分の磨き残しが少なくなる方法を探してみてください。

「ちゃんと毎日磨いているのに、いつも同じところに歯垢が残る」という方は、一度歯科医院で磨き方を確認してもらうことをおすすめします。