矯正に興味があっても、花粉症が辛くて、やろうかどうか悩む方はいらっしゃると思います。厚生労働省によると、花粉症の患者数を示す明確な統計は限られるものの、アレルギー性鼻炎全体とともに年々増加しているとされています。

くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状がつらい花粉症ですが、実は歯並びに影響する可能性があることをご存じでしょうか。鼻づまりをきっかけに口呼吸が習慣化すると、口周りの筋肉や舌の位置のバランスが崩れ、歯並びが乱れやすくなることがあります。矯正治療を検討中の方にとっても見逃せないポイントです。本記事では、矯正と花粉症、両方の視点から、その意外な関係をわかりやすく解説します。

こんな方におすすめ

  • 花粉症の鼻づまりで口呼吸になりがちな方
  • 矯正中・矯正を検討している方
  • 子どもの歯並びが気になる保護者の方

この記事を読んでわかること

  • 花粉症と歯並びが関係する理由
  • 口呼吸で起こりやすい歯並び・口のトラブル
  • 矯正と合わせて意識したい花粉症対策のコツ

花粉症と歯列矯正は無関係ではない

花粉症と歯列矯正って関係あるのだろうかと疑問に思う方は少なくありません。一見まったく別の問題に見えますが、実は花粉症の症状により、歯並びの悪化へとつながるケースがあります。

もちろん、花粉症そのものが直接歯列を動かすわけではありません。鼻づまりなどの症状が、日常の呼吸習慣を変えてしまうことが影響します。つまり、花粉症は単なる季節の不調ではなく、口腔環境や歯並びにまで関係する生活習慣の問題とも言えるのです。

花粉症が歯並びに影響する本当の理由

花粉症が歯並びに影響する本当の理由についてご説明します。花粉症による歯並び悪化の最大の原因は、鼻づまりが起きたことによる口呼吸の習慣化です。花粉症で起きがちな症状を挙げていきましょう。

  • 鼻水・鼻づまり
  • くしゃみ
  • 目のかゆみや涙目
  • 集中力の低下

これらは花粉に対するアレルギー反応として起こります。本来は鼻から吸うことで、鼻のフィルターを通した空気が肺に送られます。ところが、鼻がアレルギー反応により詰まると、自然と口から呼吸するようになり、これが長期間続いてしまうと、歯並びに影響が出てしまうのです。

口呼吸が続くと起こる歯並びへの悪影響

本来、正しい呼吸は鼻で呼吸する鼻呼吸です。しかし、鼻呼吸できず、口呼吸が習慣化すると、口腔周囲の筋肉バランスが崩れてしまいます。バランスが崩れることによって起きる影響を挙げていきましょう。

筋肉機能の低下

口呼吸を長期間行うということは、口が開いたままの状態になります。口が開いたままでは、下あごが下がり、舌の位置が低くなってしまい、口を閉じる筋力が弱くなるといった変化が起こります。その結果、舌が前歯を押して歯列が乱れる原因になります。

上顎の成長不足

ぽかん口という口を開けたままでいると、最も影響を受けやすいのが成長期の子供です。舌は上顎の正しい位置をスポットとします。その舌が口呼吸により正しい位置にない場合、上顎への適切な圧力がかかりません。

  • 上顎の発育不全
  • V字型の歯列
  • 出っ歯傾向

筋肉機能の低下や、顎の成長不足により、不正咬合を招くことがあります。

花粉症が招きやすい不正咬合の具体例

口呼吸が続くことで、次のような歯並びのトラブルが起こりやすくなります。

開咬(かいこう)
奥歯がしっかり噛み合っていても、前歯が噛み合わず隙間ができる状態の歯並びです。前歯と前歯が接触しないため、ちぎれず食べ物が噛みにくくなります。

上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上の歯や顎が前に突出していて、噛みにくい状態の歯並びで、一般的に出っ歯と言います。日本人に比較的多い不正咬合で、乾燥しやすく虫歯になりやすいです。程度によっては口が閉めづらくなります。

下顎前突(かがくぜんとつ)
下の歯が上の歯よりも前に出てしまっている歯並びで、一般的に受け口と言います。横顔の見た目が気になるという方が多く、咀嚼や発音に影響することがあります。

咬み合わせが悪いと顎関節に負担を掛けたり、ちゃんと噛めないため消化機能に負担を掛けてしまいます。いずれも単なる見た目の問題のみではありません。

口呼吸によるお口トラブルは歯並び以外にもある

口呼吸の影響は歯列だけにとどまりません。口腔内の他の部分にも影響を及ぼします。

虫歯、歯周病リスクの増加

口呼吸が続くと、口の中が常に空気にさらされるため乾燥しやすくなります。その結果、唾液の分泌量が減少し、口腔内の環境が悪化してしまいます。

唾液の働きについて

唾液には、単に口を潤すだけでなく、次のような重要な働きがあります。

自浄作用

食べかすや細菌を洗い流し、口の中を清潔に保つ働きがあります。

抗菌作用

唾液に含まれる成分が細菌の増殖を抑え、虫歯や歯周病菌が増えるのを防ぎます。

再石灰化作用

食事によって一度溶けかけた歯の表面を修復し、歯を強く保つ役割があります。

口呼吸によって乾燥状態が続くと、これらの働きが十分に発揮されなくなります。すると、細菌が繁殖しやすい環境となり、歯の表面にプラーク(歯垢)がたまりやすくなります。その結果、虫歯の発生リスクが高まり、さらに歯ぐきにも炎症が起こりやすくなって歯周病の進行につながります。特に矯正装置を装着している場合は、装置の周囲に汚れがたまりやすいため、口腔内が乾燥するとトラブルのリスクがより高くなる点にも注意が必要です。

口臭の悪化

口呼吸によって唾液の分泌量が減少し、口の中が乾燥すると、細菌が繁殖しやすい環境になります。本来、唾液には細菌の増殖を抑えたり、食べかすや汚れを洗い流したりする働きがありますが、乾燥するとその働きが十分に発揮されなくなります。

その結果、口腔内に残った細菌が食べかすや粘膜の成分を分解する際に、揮発性硫黄化合物(VSC)と呼ばれるガスを発生させます。これが、いわゆる口臭の主な原因物質です。特に、舌の表面の舌苔や歯と歯ぐきのすき間に細菌がたまりやすく、乾燥した状態では臭いが強くなりやすい傾向があります。

寝ている間も要注意

口呼吸の方は寝ている間も口が開いた状態になりやすく、起床時に強い口臭を感じることがあります。これは、就寝中に唾液の分泌がもともと減るうえに、口の乾燥がさらに進んでしまうためです。

口呼吸による乾燥は単なる不快感にとどまらず、細菌の増殖を促し、口臭を発生、悪化させる原因となるため、鼻呼吸を意識して口腔内の潤いを保つことが大切です。つまり、花粉症による口呼吸は、歯並び、虫歯、口臭など総合的な口腔リスクを高める一因になるともと言えるのです。

矯正治療を考えるなら花粉症対策も重要

矯正治療を考えるなら花粉症対策も重要となります。矯正治療で歯並びを整えても、口呼吸が続けば再び歯列が乱れる可能性があります。そのため矯正治療では、歯並びの改善、呼吸習慣の改善を同時に考えることが重要です。

花粉症や慢性鼻炎がある場合は、耳鼻科での治療も並行して行うことが推奨されています。鼻の通りを改善し鼻呼吸へ戻すことが、歯並びへの悪影響を軽減する可能性があります。

花粉症シーズンにできるセルフケアと予防習慣

矯正中、もしくは矯正治療を検討中の方は、次のポイントを意識しましょう。

日常で意識したいポイント

では、日中で意識したいポイントを表にまとめました。

対策 ポイント 具体的な工夫
できるだけ鼻呼吸を意識 起きている時は鼻で呼吸できているか意識 仕事中や移動中など口が開いていないかを時々チェックする
就寝時の口開きを防ぐ工夫 寝ている間の口呼吸を減らす 口が開きやすい方は市販の口閉じテープを試す
花粉症治療薬・点鼻薬を適切に使用 鼻づまりを軽減し、鼻呼吸しやすくする 薬や点鼻薬で症状が軽くなることがあるが、必要に応じて医師に相談する
水分補給 乾燥を防いで口腔環境を守る 口が乾く前に少量ずつでもこまめに水分をとる
定期的な歯科医院でのチェック 矯正の進み具合と負担を確認 歯が予定通り動いているか/力がかかり過ぎていないか等をチェックしてもらう

矯正は装置をつけるだけでなく、生活習慣も治療の一部と捉えましょう。

まとめ


矯正で花粉症は関係あるかという問いについて花粉症と歯列矯正は無関係ではないと言えます。花粉症から鼻づまりを起こし口呼吸になり、歯並び悪化という連鎖が起こる可能性があるからです。歯並びを守るために大切なのは、矯正治療で歯列を整えること、花粉症を適切に管理すること、鼻呼吸を習慣化すること、この3つを同時に考えることです。花粉症のある方こそ、歯並びの変化を季節のせいと放置せず、早めに歯科、耳鼻科へ相談することが、将来の健康な口元につながります。