定期健診と歯のクリーニングって、同じものじゃないの?
一般的には定期健診はお口の健康状態をチェックする診察であり、歯のクリーニングは歯石や歯垢を取り除くための処置です。目的も内容も異なります。
しかし、定期健診では簡易的な歯のクリーニングも行うため、定期健診=歯のクリーニングというのも間違っているとは言い切れません。(定期健診の内容は歯科医院によっても異なります)
虫歯や歯周病のチェックを受けたいのか、歯垢や歯石を落とすクリーニングを受けたいのか、目的によって予約を行いましょう。
この記事はこんな方に向いています
- 定期健診と歯のクリーニングの違いがよく分からない方
- 歯科医院でどちらを受ければよいのか迷っている方
- むし歯や歯周病を予防したいと考えている方
- 長く自分の歯を健康に保ちたい方
この記事を読むとわかること
- 定期健診と歯のクリーニングの目的・内容の違い
- それぞれを受けるべきタイミングと頻度
- 両方を組み合わせて受けることのメリット
- 予防歯科の考え方と、自宅ケアとのバランス
目次
定期健診とはどんな目的で行われるもの?
定期健診は、歯や歯ぐき、かみ合わせ、口腔内全体の健康状態をチェックし、異常を早期に発見するための診察です。目に見えない小さなむし歯や、初期の歯周病などを早期に発見できることが最大の目的です。
定期健診は「お口の健康を守るための診察」です。
定期健診では、次のような内容を確認します。
- むし歯や歯周病の有無のチェック
→ 初期段階では痛みがないため、プロによる確認が重要です。 - 歯ぐきの状態の確認
→ 出血、腫れ、歯周ポケットの深さなどを調べます。 - かみ合わせの状態
→ 力のかかり方の偏りが歯の破損や不正咬合の原因になることがあります。 - 詰め物・被せ物の状態確認
→ 古くなった補綴物がむし歯再発の原因になる場合があります。
これらを総合的にチェックし、必要に応じてレントゲン撮影や歯周ポケット測定を行います。定期健診は「治療のため」ではなく、「病気を未然に防ぐため」の診察です。健康診断が体の異常を早期発見するように、口の中の健康維持にも欠かせない行為です。
歯のクリーニングはどんな処置をするの?
歯のクリーニングは、歯垢や歯石を取り除くことで、むし歯や歯周病を防ぐ予防的処置です。歯科衛生士が専用の器具で丁寧に清掃し、自宅の歯磨きでは落とせない汚れを除去します。
定期健診でも軽くクリーニングを行う場合がありますので、定期健診でどのようなことを行うかは、予約の際に質問しましょう。
歯のクリーニングは「プロによるお口の掃除」です。
クリーニングでは、主に以下の工程を行います。
- スケーリング(歯石取り)
→ 歯に固着した歯石を超音波スケーラーで除去します。 - エアフロー、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)
→ エアフローは微細なパウダーをジェット水流で歯に吹き付けて汚れを洗い流します。PMTCは専用のブラシとペーストで歯の表面を磨き上げ、バイオフィルム(細菌膜)を除去します。 - 仕上げ研磨・フッ素塗布
→ 歯面をツルツルにすることで、歯垢が付きにくくし、再付着を防ぎます。
歯石や着色は自宅の歯磨きでは取りきれません。特に歯と歯ぐきの境目や、奥歯の裏側に汚れがたまりやすいため、定期的なクリーニングが重要です。
クリーニングは「美容目的」だけでなく、細菌の温床を除去する治療と予防の中間的なケアといえます。
定期健診と歯のクリーニングの違いを比較すると?
定期健診は診察・検査、クリーニングは清掃・処置。目的も内容も異なりますが、どちらも口腔の健康維持に欠かせない存在です。
健診の本来の目的は「歯の状態を調べる」、クリーニングは「歯をきれいにする」。
| 比較項目 | 定期健診 | 歯のクリーニング |
|---|---|---|
| 主な目的 | むし歯・歯周病などの早期発見 | 歯垢・歯石の除去と予防 |
| 担当者 | 歯科医師 | 歯科衛生士 |
| 内容 | 診察、レントゲン、かみ合わせ確認 | スケーリング、エアフロー、PMTC、フッ素塗布 |
| 所要時間 | 約20〜30分 | 約30〜60分 |
| 頻度の目安 | 3〜6か月に1回 | 3〜4か月に1回 |
| 保険適用 | あり(条件により異なる) | 一部保険適用または自費 |
このように、両者は「目的」「実施者」「内容」すべてが異なります。定期健診は“チェック”、クリーニングは“ケア”という役割の違いを理解しておくことが大切です。
ただし、医院によっては定期健診の内容に軽く歯のクリーニングを行うことも含んでいる場合があり、これは歯科医院によって内容が異なりますので、予約の時にご確認ください。
または、初診の際にはレントゲンや視診で虫歯や歯周病の有無を調べ、必要な場合は治療に入り、次回の予約は治療とクリーニング(メンテナンス)の両方を受けて頂く場合もあります。
治療が終わると、予防歯科としての3ヶ月に一度の定期健診で、主に歯科衛生士によるクリーニングを受けて頂きます。
どちらも受けた方がいい理由とは?
健診とクリーニングはどちらか片方だけでは不十分です。健診で異常を早期発見し、クリーニングで原因を除去することで、お口の健康を長く維持できます。
両方を受けることで得られるメリット
- むし歯・歯周病の早期発見・早期治療
→ 定期健診で異常を見逃さない。 - 汚れの除去と再付着の防止
→ クリーニングにより清潔な環境を維持。 - 歯の寿命を延ばせる
→ 歯周組織の炎症を防ぎ、歯の喪失を防ぐ。 - 口臭の予防や見た目の改善
→ 歯の表面がツルツルになり、清潔感が向上。
定期健診だけでは歯石は取れず、クリーニングだけでは病気の発見が遅れる可能性があります。「健診で発見 → クリーニングで改善」という流れを習慣化することが、理想的な予防サイクルです。
定期健診で落としきれない歯の汚れはどうしたらいい?
当院では定期健診でエアフローを用いて歯垢や歯石を落としますが、それだけでは落としきれない煙草のヤニなどの汚れは、クリーニングの予約をお取りいただき、その場合は保険のきかない自由診療になることがあります。
ケースバイケースですので、詳しくは担当の歯科衛生士におききください。
通常の飲食による歯の黄ばみは定期健診時のエアフローだけで落ちて本来の歯の色に戻る場合が多いです。さらに白くしたい場合は、ホームホワイトニング(自費診療)をご検討ください。
自宅ケアと歯科医院でのケアをどう使い分ける?
毎日の歯磨きが基本ですが、それだけでは歯垢や歯石を完全に除去できません。自宅では歯磨きとフロス・歯間ブラシ、歯科医院ではクリーニングと健診を組み合わせましょう。
「日々のケア+プロのケア」が最強の予防法です。
自宅ケアのポイント
- 正しい歯磨き習慣を保つ
→ 力を入れすぎず、歯と歯ぐきの境目を意識して磨く。 - フロスや歯間ブラシを使用する
→ 歯と歯の間の歯垢はブラシだけでは取れません。 - バランスの良い食事を心がける
→ 糖分の摂りすぎは歯垢の栄養源になります。
これに対し、歯科医院では次のような役割を担います。
- 自宅で落とせない汚れを除去
- 歯ぐきの状態や歯石の進行をチェック
- 将来のトラブルを予防する指導
毎日のケアが「維持」、歯科でのケアが「補完」という位置づけです。
両方をバランスよく続けることで、トラブルを未然に防げます。
どのくらいの頻度で通うのが理想?
一般的には3〜6か月ごとが目安ですが、歯ぐきの状態や生活習慣によって個人差があります。歯周病の既往がある人や喫煙者は、より短いサイクルでの通院が勧められます。
3〜6か月に1回の通院が理想です。
頻度の目安
- 健康な人は半年に1回程度
→ メンテナンスとして継続的に受診。 - 歯周病リスクが高い人は3か月に1回程度
→ 歯石の再付着が早く、管理が重要。 - インプラントや矯正中の方は2〜3か月ごと
→ 人工歯や装置周囲の清掃が必要。
歯科医師や歯科衛生士が口内の状態に合わせて最適な間隔を提案します。通うほど費用や手間がかかるように見えて、結果的には治療費を抑え、歯を長持ちさせることにつながります。
まとめ
健診とクリーニングの両立が健康な歯を守るためには重要です。
定期健診は「チェック」、歯のクリーニングは「メンテナンス」。どちらもお口の健康に欠かせません。両方を組み合わせることで、むし歯や歯周病を防ぎ、美しい歯を維持できます。
「診る」と「整える」で、歯の健康を守りましょう。
定期健診と歯のクリーニングは、似ているようで役割が異なるものです。
- 健診=異常の早期発見
- クリーニング=汚れの除去と予防
この2つを定期的に受け続けることで、年齢を重ねても自分の歯で食べる喜びを保てます。
“痛くなってから行く歯医者”ではなく、“健康を保つために通う歯医者”へ、というのが、「予防歯科」の考え方です。




