インプラント周囲炎とは?初期症状・原因・治療法・予防方法を解説

高槻クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 髙野 祐

インプラント周囲炎とは?

インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲に炎症が起こり、進行するとインプラントを支えている顎の骨まで失われていく病気です。

インプラントそのものは人工物なので虫歯にはなりません。しかし、その周囲にある歯ぐきや顎の骨は患者さん自身の組織です。歯垢がたまり炎症が続けば、天然歯の歯周病と似た問題が起こることがあります。

しかも、初期には痛みがほとんどなく、「普通に噛めているから大丈夫」と思っている間に進行することがあります。

インプラントを長く使うためには、壊れてから治すのではなく、炎症が小さい段階で見つけることが重要です。

この記事を読むとわかること

  1. インプラント周囲炎とはどのような病気なのか
  2. インプラント周囲粘膜炎との違い
  3. 初期症状と進行したときの症状
  4. インプラント周囲炎になる主な原因
  5. なりやすい人の特徴
  6. インプラント周囲炎の治療方法
  7. 自宅でできる予防と歯科医院でのメンテナンス
  8. 治療期間・通院回数・費用の考え方

 

インプラント周囲炎とはどのような病気ですか?

インプラント周囲炎とは、インプラントの周りの歯ぐきに起きた炎症がさらに深い部分へ広がり、インプラントを支える顎の骨にまで影響した状態です。

日本歯周病学会の一般向け情報でも、インプラント周囲に歯垢がたまって炎症が起こり、インプラントを支える骨まで失われる状態をインプラント周囲炎として説明しています。

インプラントは顎の骨によって支えられています。そのため、周囲の骨が減少してしまうとインプラントを支える力が弱くなり、重症になると保存が難しくなることがあります。

インプラントは虫歯にはなりませんが、インプラントを支える歯ぐきや骨には病気が起こります。「人工の歯だから一生何もしなくても大丈夫」というものではありません。

インプラント周囲炎は、天然歯に起こる歯周病によく似ています。ただし、天然歯とインプラントでは周囲組織の構造が異なるため、いったん炎症が深くまで進むと治療が難しくなることがあります。

指定いただいた参考ページでも、インプラントと天然歯では周囲組織の構造が異なり、歯垢による細菌感染から炎症が起こることが説明されています。

天然歯の歯周病とインプラント周囲炎の違い

インプラント周囲炎は「インプラントの歯周病」と表現されることがあります。
患者さんには理解しやすい表現ですが、天然歯の歯周病とまったく同じものではありません。

比較項目 天然歯の歯周病 インプラント周囲炎
炎症が起こる場所 天然歯の周囲 インプラントの周囲
主な原因 歯垢などの細菌 歯垢などの細菌
骨への影響 進行すると歯を支える骨が減る 進行するとインプラントを支える骨が減る
初期の痛み 少ないことがある 少ないことがある
重症化した場合 歯を失う可能性がある インプラントの保存が難しくなる可能性がある

共通しているのは、どちらも痛くなってから気付く病気とは限らないことです。

インプラント周囲炎を考えるときは、「痛いかどうか」よりも、歯ぐきからの出血や腫れ、骨の状態などを継続して確認することが大切です。

インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎は何が違うのですか?

インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎は何が違うのですか?の図解

インプラント周囲の炎症には、大きく分けてインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎があります。

最も重要な違いは、インプラントを支える骨にまで影響が及んでいるかどうかです。

日本歯周病学会では、炎症が粘膜にとどまっている状態を「インプラント周囲粘膜炎」、炎症がインプラントを支える骨にまで進行した状態を「インプラント周囲炎」と説明しています。

インプラントを長く守るために特に大切なのは、骨が失われる前の「インプラント周囲粘膜炎」の段階で炎症に気付くことです。

インプラント周囲粘膜炎と周囲炎の違い

同じように「歯ぐきから血が出る」という症状でも、炎症の進行度は異なる場合があります。
自分で判断するのではなく、歯科医院で歯ぐきと骨の両方を確認することが重要です。

状態 インプラント周囲粘膜炎 インプラント周囲炎
炎症 主に歯ぐき・粘膜 歯ぐきから骨へ広がる
出血 みられることがある みられることがある
骨の減少 基本的には認めない 認める
治療 清掃・セルフケア改善など 状態に応じて専門的な治療が必要
重要なポイント 早い段階で改善を目指す できるだけ早く進行を抑える

この2つを区別する理由は、骨が失われる前と後では治療の難しさが変わるからです。

「血が少し出るだけだから様子を見よう」と考えるより、小さな変化をインプラントからのサインとして受け止めることが大切です。

インプラント周囲炎にはどのような初期症状がありますか?

インプラント周囲炎で注意したいのは、初期には強い痛みを感じないことがある点です。

日本歯周病学会の解説でも、インプラント周囲炎は痛みなどの自覚症状を伴わずに進行することが特徴として挙げられています。

「痛くないから問題ない」とは限りません。インプラント周囲炎では、痛みより先に歯ぐきの出血や腫れなどが現れることがあります。

たとえば、次のような変化には注意しましょう。

  1. 歯磨きをするとインプラントの周囲から出血する
    → 歯ぐきに炎症が起きている可能性があります。
  2. 歯ぐきが赤くなったり腫れたりする
    → インプラント周囲粘膜炎の段階でもみられる症状です。
  3. 歯ぐきから膿が出る
    → 炎症が進行している可能性があるため、早めの受診が必要です。
  4. 歯ぐきが下がってインプラントの根元が見える
    → 骨や歯ぐきの変化が進んでいる可能性があります。
  5. インプラントがぐらつく
    → 支えている骨が大きく失われている可能性があり、早急な診察が必要です。

指定いただいた参考ページでも、周囲炎が進行すると出血・排膿・歯ぐきの退縮・インプラントの動揺などがみられるとされています。

ここで注意したいのは、ぐらついてから歯科医院へ行くのでは遅い場合があることです。目標は動揺を見つけることではなく、そのずっと前に小さな炎症を発見することです。

なぜインプラント周囲炎になってしまうのですか?

大きな原因となるのが、インプラント周囲にたまった歯垢による細菌感染です。

インプラントと歯ぐきの境目などに磨き残しが続くと細菌が増え、周囲の組織に炎症が起こります。

日本歯周病学会では、インプラント周囲炎はインプラントと粘膜の間にたまった歯垢中の細菌によって炎症が起こり、進行するとインプラントを支える骨にまで影響すると説明しています。

インプラント周囲炎は「インプラントそのものが悪くなる」というより、インプラントを支えている周囲組織に炎症が起こる病気と考えるとわかりやすいでしょう。

発症・進行に関係する要素としては、

  1. インプラント周囲の磨き残し
  2. 歯科医院でのメンテナンス不足
  3. 歯周病の既往
  4. 喫煙
  5. お口の清掃状態
  6. インプラント周囲を清掃しにくい被せ物の形

などがあります。

そのため、毎日歯を磨いているというだけで十分とは限りません。

被せ物の下や歯ぐきとの境目など、自分のインプラントのどこに汚れがたまりやすいのかを知ることが予防の第一歩になります。

インプラント周囲炎になりやすい人には特徴がありますか?

インプラント周囲炎は、誰にでも同じ確率で起こるとは限りません。

特に、もともと歯周病によって歯を失った方では、インプラント治療後も歯周組織の管理を続けることが重要です。日本歯周病学会では、歯周病患者さんに対するインプラント治療についての治療指針も公表しています。

「なぜその歯を失ったのか」を確認することは、インプラントを入れる前だけでなく、入れた後の周囲炎予防にもつながります。

インプラント周囲炎に注意したいケース

リスクがあるからといって、必ずインプラント周囲炎になるわけではありません。
大切なのは、自分にどのような注意点があるのかを把握し、管理方法を調整することです。

ケース 注意したい理由 対策
歯周病になったことがある 歯周組織の炎症を再発させない管理が必要 天然歯を含めた歯周病管理を続ける
歯磨きが苦手 インプラント周囲に歯垢が残りやすい 歯磨き方法や補助清掃用具を確認する
喫煙している インプラント周囲疾患のリスク管理が必要 禁煙・減煙について相談する
メンテナンスを受けていない 初期の炎症を発見しにくい 定期的に歯科医院で状態を確認する

とりわけ歯周病で歯を失った方は、「悪くなった歯をインプラントに交換したから問題が解決した」と考えないことが重要です。

歯を失った原因がお口全体の歯周病であれば、インプラントを入れた後もその原因と付き合っていく必要があります。 ここはインプラント治療を長く成功させるうえで見落としたくないポイントです。

インプラント周囲炎はどのように治療するのですか?

治療方法は、炎症の程度や骨の減少量などによって異なります。

比較的軽い段階では、インプラント周囲の歯垢や汚れを除去し、患者さん自身の歯磨き方法を見直します。一方、骨の減少を伴うインプラント周囲炎では、より専門的な処置が必要になる場合があります。

インプラント周囲炎の治療で重要なのは「何をすれば治るか」を一律に考えるのではなく、炎症がどこまで進んでいるかを診断して治療法を選ぶことです。

主な治療には、

  1. インプラント周囲の歯垢・歯石などの除去
  2. 自宅での歯磨き方法の改善
  3. インプラント表面の清掃
  4. 必要に応じた薬剤の使用
  5. 外科的に患部を確認して行う処置
  6. 症例によって骨の再生を目的とした治療
  7. 保存困難な場合のインプラント撤去

などがあります。

日本歯周病学会の一般向け解説でも、インプラント周囲炎の治療として非外科的治療、外科的治療、再生療法などが紹介されており、改善が難しい場合にはインプラントの抜去が必要になることもあるとされています。

だからこそ、治療方法の選択肢が少なくなる前に見つけることが重要です。

インプラント周囲炎を早く見つけるメリットは何ですか?

最大のメリットは、インプラントを支える骨が失われる前の段階で対応できる可能性が高まることです。

インプラント周囲粘膜炎の状態であれば、骨の喪失を伴うインプラント周囲炎よりも早い段階です。

メンテナンスの目的は、単にインプラントを「掃除してもらうこと」ではありません。自分では気付きにくい炎症を早く見つけることにも大きな意味があります。

反対に、放置するデメリットとして、

  1. 骨の減少が進む
  2. 治療が複雑になる
  3. 通院回数が増える可能性がある
  4. 外科的治療が必要になる可能性がある
  5. インプラントを残せなくなる可能性がある

ことが挙げられます。

インプラント周囲炎では「治療すること」以上に、治療が大がかりになる段階まで進ませないことが重要です。

インプラント周囲炎を予防するには何をすればいいの?

予防の基本は、毎日のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスを組み合わせることです。

どちらか一方だけではなく、患者さんと歯科医院の両方で管理していくことが重要です。

インプラントのメンテナンスは「治療後のおまけ」ではなく、インプラント治療そのものの続きと考えてください。

自宅では、

  1. 毎日の歯磨きを丁寧に行う
  2. 必要に応じて歯間ブラシやデンタルフロスを使用する
  3. 歯ぐきからの出血を見逃さない
  4. 自分に合った清掃方法を歯科医院で確認する

ことが大切です。

歯科医院では、歯垢や歯石の除去だけでなく、歯ぐきの炎症、出血、インプラントの状態、必要に応じて骨の状態などを確認します。

「毎日きちんと磨いているから歯科医院には行かなくてもよい」という考え方はおすすめできません。セルフケアでは見えない変化を確認することが、定期メンテナンスの大きな役割だからです。

インプラント周囲炎の治療期間・通院回数・費用はどのくらいですか?

インプラント周囲炎の治療期間や費用は、炎症の進行度によって大きく異なります。

初期の炎症と、骨が大きく失われたインプラント周囲炎では、必要になる治療内容が同じではありません。

インプラント周囲炎では「治療費はいくらか」だけでなく、「現在どこまで進行していて、どの治療が必要なのか」を先に確認することが大切です。

治療期間・通院回数・費用の考え方

以下はあくまで一般的な考え方です。
具体的な治療内容や費用については、診察を受けたうえで歯科医院に確認してください。

状態 主な対応 期間・通院の考え方
軽い炎症 清掃・歯磨き方法の改善など 比較的少ない通院で経過観察できる場合がある
インプラント周囲粘膜炎 専門的清掃・セルフケア改善 炎症が落ち着くまで継続して確認
インプラント周囲炎 非外科的治療や外科的治療など 複数回の治療・経過観察が必要になることがある
重度 外科的治療や撤去などを検討 治療が長期化する場合がある

費用についても、単純なクリーニングなのか、外科的治療まで必要なのかによって異なります。また、インプラント治療は自由診療で行われていることが多く、周囲炎の治療についても医院や治療内容によって費用の扱いが異なる場合があります。

治療を受ける前に、現在の状態、必要な処置、費用、治療後のメンテナンスまで確認しておくと安心です。

まとめ|インプラント周囲炎は「痛くなる前」に見つけることが重要です

インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲に起こった炎症が進行し、インプラントを支える骨にまで影響する病気です。

原因の中心となるのは歯垢による細菌感染で、初期には強い痛みを感じない場合があります。

特に覚えておきたいのは、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎は同じ段階ではないということです。

歯ぐきの炎症だけにとどまっているうちに異変を見つけ、骨まで炎症を進ませないことが重要です。

そのためには、

  1. インプラント周囲を丁寧に歯磨きする
  2. 歯間ブラシなどを適切に使用する
  3. 出血や腫れを放置しない
  4. 定期的なメンテナンスを受ける
  5. 歯周病を含めてお口全体を管理する

ことを意識しましょう。

インプラントは「入ったら治療終了」ではありません。
インプラントを入れる治療と、その後に守っていく管理。この2つがそろって初めて長期的なインプラント治療になります。

痛みがなくても、インプラント周囲から出血する、歯ぐきが腫れる、以前と見た目が変わったなどの症状がある場合は、早めに歯科医院で状態を確認してもらいましょう。

関連ページ:高槻クローバー・矯正歯科のインプラント治療