歯と口のトラブル

歯ぎしり・食いしばりはどうして起こるの?

歯ぎしり・食いしばりはどうして起こるの?

高槻クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 髙野 祐

歯ぎしりは寝ている間、無意識のうちに上下の歯を噛み合わせてこすってギリギリと音をたてることをいいます。そして食いしばりは無意識でギュッと歯を噛みしめてしまうことをいいます。どちらも歯に強い力がかかり、歯を傷めるだけでなく顎や歯肉、ときには全身にも悪影響を与えます。歯ぎしり・食いしばりの原因や影響、解決策についてご説明します。

歯ぎしり・食いしばりの主な原因はストレス

歯ぎしり、食いしばりの原因は、かつては噛み合わせの異常によって起こっているとの考え方が主流でした。そのため、対症療法として噛み合わせの治療を行っていました。

しかし脳の研究によって、歯ぎしり、食いしばりは脳のストレスを緩和するために行われているということがわかってきました。

それを解明したのがKail KとSlavicek Rです。彼らは、「睡眠時ブラキシズムの患者は精神的ストレスを意識化で解決することができないために、咀嚼期間を精神的なストレスの調節弁として使っている」と記しています。どういうことかというと、睡眠中などに起こる歯ぎしり・食いしばりは、ストレスを解消するために無意識のうちに身体が起こしているということです。

歯ぎしりや食いしばりによって顎にかかる力は、かなりのものです。起きている時の噛む力は最大12g/㎠といわれています。一方、睡眠時の噛む力(歯ぎしり、噛みしめの際にかかっている力)は最大74g/㎠といわれ、6倍以上の力がかかっていることになります。

これだけ強い力が歯や歯茎や骨にかかると、歯にダメージがあるだけでなく、顎関節症を引き起こしたり、噛み合わせが狂ったり、お口の中に様々な影響を及ぼす危険があります。

ストレス社会の現在では多くの人が夜寝ている間に歯ぎしり・食いしばりを行い、歯を傷めているのです。そして歯はその厳しい環境に長年耐え続け、いろいろな形で適応しようとしているのです。

歯ぎしりってどんなもの?食いしばりとどう違うの?

歯ぎしり

歯ぎしりは眠っている間に最も一般的に発生しますが、全く無意識のうちに1日を通して発生することもあります。

歯ぎしりは、癖だからということで放っておく人が多いようです。歯を軽く擦り合わせることには害はありませんが、強く擦り合わせると歯や歯茎に大きな負担がかかり、長く続けると歯だけではなく身体のあちこちに悪い影響が出てきます。

歯ぎしりとよく似た症状として食いしばりがあります。歯ぎしりは噛み合わせた状態で歯を横に強く動かすのに対し、食いしばりはそのまま力いっぱい噛み込んでしまうもので、音は発生しません。

歯ぎしり・食いしばりの様々な悪影響

食いしばり

歯ぎしり、食いしばりによって歯や歯茎などに様々な影響が出ますのでご説明します。

1. 歯への悪影響

  • 歯がすり減る、欠ける、割れる
  • 歯の寿命が短くなる
  • 知覚過敏を起こす

普段の食事の際には、食べ物の硬さによって上下の歯にかかる力は無意識に調整されており、不必要に強く噛むことはありません。しかし、歯ぎしり、食いしばりの時の歯にかかる力は相当のもので、しかも無意識に行うことですので、自分では加減が出来ません。

歯ぎしりや食いしばりによって歯に圧力が加わり続けると、歯がすり減ったり、欠けたり、割れたりします。そのため、歯ぎしりや食いしばりがあると、歯の寿命が一気に短くなります。

また、歯が強く擦れることで、歯の表面の硬いエナメル質が破壊されてしまい、虫歯でもないのに歯がしみる知覚過敏という症状を起こしやすくなります。知覚過敏は初期の段階であれば知覚過敏を防ぐ歯磨き剤で痛みが緩和することがありますが、痛みが頻繁に起こるようになると、痛み止めの服用が日常的に必要になり、神経を取る治療を行うこともあります。

2. 歯肉への悪影響

歯ぎしり・食いしばりは歯だけでなく、歯肉にも影響を与えることがあります。歯ぎしりが繰り返されると歯肉などの組織に炎症が起こり、血液循環の悪化や血管網の破壊によって歯茎が下がります。歯周病菌が増殖して歯周病が悪化する可能性もあります。

3. 顎関節への悪影響

歯ぎしり・食いしばりによって歯全体に強い力がかかり続けると、同時に顎関節にも強い力がかかります。その影響で顎関節に痛みが出たり、顎関節症を引き起こすこともあります。

4. 全身への悪影響

歯ぎしり・食いしばりの強い力は、顎の筋肉だけではなく肩、首、側頭筋、僧帽筋など多くの筋肉を収縮させることで生み出されます。無意識下で起こっているため、ご自身は力を入れている意識はないのですが、歯ぎしり・食いしばりが繰り返されると、顎・首・肩・側頭部の筋肉疲労が続きます。そして血流が悪くなり、全身にも悪影響を与えるます。

歯ぎしり・食いしばりはどうやって診断するの?

歯科医師や歯科衛生士が患者さんの歯や舌を観察し、顎の骨や顎、顔の筋肉の状態を観察することで、歯ぎしりや食いしばりの有無を確認することが出来ます。

歯ぎしり・食いしばりは、患者さん自身が疲労感や家族の指摘などから睡眠中に歯ぎしりや食いしばりをしていることを自覚して相談に来られる場合があります。

それ以外の、無自覚で歯ぎしり・食いしばりを行っている方の診断基準としては、歯面に異常なすり減りが認められる、虫歯ではないのに歯がしみる・痛みが出る(知覚過敏)、セラミックなどの詰め物・被せ物が外れたり割れたりしやすい、頬や舌にくっきりと歯型がつく、肩こり・首こりが強い、頭痛がある等、お口の中だけでなく身体を総合的に診て診断します。

また、口を閉じた状態では、上下の歯は触れていないのが正常です。何かに集中しているときに上下の歯が接触している、または強く当たっている場合は、無意識で噛みしめをしている可能性があります。

日常的に噛みしめを行っていない人でも、例えば朝起きるときに横になってままで腕や身体をぐーっと伸ばして伸びをしたときに、同時に歯をぎゅっと噛みしめていた、というケースもあります。

歯ぎしり・食いしばりの解決策

歯ぎしり・噛みしめへの対応は患者さんごとに異なりますので、必ず専門家に相談して下さい。もっとも一般的な解決策の一つは、ナイトガードを装着していただくことです。ナイトガードはマウスピースの一種で、夜間の歯ぎしりから歯を保護するためのものです。

日中に歯ぎしりや食いしばりが起こる場合は、歯を噛みしめる習慣をなくすように出来るだけリラックスやストレスの発散を心がけ、普段は上下の歯が離れている状態を保つように意識しましょう。

カフェインとアルコールは歯ぎしりのレベルが高くなることが知られていますので、多く摂取するのは避けるように心がけましょう。ガムを噛むことも最小限に抑えた方が歯の症状の緩和に繋がります。

歯ぎしり・食いしばりのために歯の表面を覆っているエナメル質が既にひどく損傷している場合は、知覚過敏と呼ばれる痛みが出ていることが考えられますので、すぐに歯科医院での診療を受ける必要があります。

歯ぎしり・食いしばりの原因に関するQ&A

歯ぎしりってどんなもの?食いしばりとどう違うの?

歯ぎしりは、眠っている間に起こることが一般的ですが、無意識のうちに1日中続くこともあります。歯ぎしりは、歯を横に強く動かすことで発生し、音がします。一方、食いしばりは歯を強く噛みしめることで起こりますが、音は発生しません。

歯ぎしり・食いしばりの悪影響は何ですか?

歯ぎしり・食いしばりによって、歯や歯茎に様々な悪影響が出ます。歯がすり減ったり欠けたりし、歯の寿命が短くなります。また、知覚過敏を引き起こす可能性もあります。さらに、歯肉に炎症が起こり、歯茎が下がる可能性や、顎関節に痛みや関節症を引き起こす可能性もあります。全身的には、顎や首、肩などの筋肉疲労や血流の悪化が起こることがあります。

歯ぎしり・食いしばりの主な原因は何ですか?

歯ぎしり・食いしばりの主な原因はストレスです。過去には噛み合わせの異常と考えられていましたが、最近の研究では、歯ぎしり・食いしばりは脳のストレスを緩和するために起こるものとされています。睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、無意識の行動であり、ストレスの解消方法として働いていると考えられています。

まとめ

歯のキャラクター

このように、歯ぎしりはストレスや不安によって引き起こされることが多いと考えられています。完全に治るという治療方法はありませんが、症状を緩和することは可能です。ストレスを減らし、歯を守ることが大切です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 高槻クローバー歯科
院長 髙野 祐

2013年 岡山大学 歯学部卒業。2014年 岡山大学病院臨床研修終了

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高槻クローバー歯科

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック