
すきっ歯の治療を考えておられる方は、どんな治療方法があるのか気になるのではないでしょうか。隙間が気になり人前で大きく笑えなかったり、食べ物が詰まりやすいなどの悩みがある方は少なくないはずです。今日は、すきっ歯になる原因や、治療法について詳しくご紹介いたします。
すきっ歯とは
すきっ歯は専門的に空隙歯列(くうげきしれつ)と呼び、歯と歯の間に通常よりも大きなすき間がある状態を指します。上の顎の前歯と前歯の間が2mm以上すき間が空いている場合はは正中離開(せいちゅうりかい)と呼ばれます。虫歯で隙間が空いた状態ではなく、通常より広く自然に空いている歯並びです。
特徴
- 前歯や奥歯などどの部分にも起こり得る
- 歯列全体が不揃いに見え、口元の見た目を気にする方が多い
- 食べ物が詰まりやすく発音がしにくい等の機能面の問題が出ることもある
すきっ歯になる原因
先天性の原因と後天性の原因があります。
先天性の原因
先天性の原因として考えられるのは、このようなケースです。
遺伝的要因がある
ご両親や近い親族に同じような歯並びの方がいる場合は、遺伝により骨格が似るため確率が高いです。
歯が通常より小さい
歯が通常のサイズよりも小さく生えてくることを矮小歯(わいしょうし)と専門的に言います。前歯から二番目の歯を側切歯(そくせっし)と呼び、その歯冠が円錐歯(えんすいし)という形状になっていることがあります。また、親知らずが蕾状歯(らいじょうし)と呼ばれる蕾のような形状で出てくることもあり、そのような矮小歯が生えてくると、どうしても歯と歯の間に隙間が生じ、すきっ歯になります。
欠損歯である
永久歯は28本生えてくるのが通常です。ところが、何らかの事情により永久歯が通常より少ない本数しか生えてこない方がおられます。本数が少なければ、歯のサイズが通常通りでも隙間は生まれやすくそれによりすきっ歯になります。
過剰歯である
過剰歯とは、28本より多く歯がある人です。上顎の前歯の歯茎に埋まっていることが多く、レントゲン撮影をして初めて知る方もおられます。埋まったままの過剰歯が前歯と前歯の間を広げてしまいます。
上唇小帯に異常がある
上唇小帯とは、上唇と歯肉を繋ぐもので、正面にあり粘膜で作られた筋です。乳幼児期には赤ちゃんの授乳を助け、言語を覚えて発音するのに役立つものです。ただし、上唇小帯が太かったり長かったりすると、歯並びに影響を与えてしまうため、すきっ歯になります。
後天性の原因
後天性の原因として考えられるのは、このようなケースです。
指しゃぶりやおしゃぶりをしていた
おしゃぶりや指しゃぶりの癖は、どうしても前歯に力が通常よりかかることから、歯並びに影響を及ぼします。裏からぐいと押すため、出っ歯やすきっ歯になりやすいです。
舌の癖がある
舌で前歯の裏を押してしまうような癖がある場合も同様です。舌の力が違うポイントにかかり過ぎてしまい、歯並びに影響を及ぼします。
歯周病だった
歯周病が進行すると歯茎が痩せてしまいます。それにより歯が動くことで、歯と歯の間に隙間が出来てしまい、すきっ歯になります。
矯正治療で抜歯処置が必要だった
矯正治療で抜歯を伴う際は、歯を抜かなければ歯の移動スペースがない歯並びの状態です。ただし、歯の動きが予想と異なり、抜歯の部分と異なりすきっ歯に見えるスペースになることがあります。
すきっ歯は放置しても良い?
幸運の歯と呼んでいるフランス、個性を大事にするアメリカや、完璧すぎるとつまらないという価値観のイギリスでは、あえてすきっ歯を治療しないという選択をされている方もおられます。口腔環境的に見て、すきっ歯は放置しても問題ないのでしょうか。それとも、治療をした方が良いのでしょうか。
すきっ歯で起こるまずいこと
すきっ歯を放置してしまうと、歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、隙間がある状態は噛み合わせに問題が起こり、噛みにくさがや顎関節に負担を掛けます。放置すると歯が少しずつ動いて隙間が広がったり、サ行の発音がしにくかったり、見た目のコンプレックスが大きくなる可能性もあるため、早めの相談が大切です。
小学校高学年から中学生にかけて、思春期の頃に歯並びを気にされる方は多いですが、その時期に治療を行うのは早計です。前から数えて3番目の犬歯が生える際に歯の隙間が改善されてすきっ歯が閉じていくこともありますので、今は様子を見ましょうといわれることがあります。Ugly duckling stageという混合歯列期を指す言葉があり、改善される場合もあるため、幼少期に治してしまうのはよくありません。
すきっ歯を治療する方法
すきっ歯は、見た目の改善だけでなく、発音障害や食べ物の詰まり、歯周病のリスクを減らす目的でも治療されます。治療方法は、隙間の大きさや原因、患者さんの希望によって異なります。
1. 矯正治療
ワイヤー矯正かマウスピース矯正で歯列全体を少しずつ動かして隙間を閉じる方法で、少し隙間が小さい方に向いています。見た目の改善のみでなく、噛み合わせが改善できます。噛み合わせの調整が不要な場合は、前歯のみの部分的な矯正を選べる場合もあります。インビザラインやスマーティなどの透明なマウスピースを用いて矯正する場合は、取り外しが可能で目立ちにくく、審美性を重視する方に人気です。
2. ダイレクトボンディング
歯科用樹脂のレジンを直接歯に盛り足して隙間を埋める方法で、1回の来院で完了することが多く、他の治療法に比べて安く行えます。歯を削る量が少なく、自然な仕上がりにできるのが魅力ですが、大きな隙間には不向きな場合があります。
3. ラミネートベニア
前歯の表面を少し削り、セラミック製の薄いシェル(ベニア)を接着剤で貼り付ける方法です。色や形を同時に整えられるため、審美的に優れておりますが、歯を少し削る必要があり、痛みが出た場合は別の処置を行わなければならないというデメリットがあります。
4. 被せ物治療
歯を全体的に削り、セラミックなどの人工歯の被せ物(クラウン)を装着して隙間を閉じる方法です。歯の形や色を大きく変えたい場合に選択されます。健全な歯質を多く削る必要があるため、歯の健康寿命を考え、慎重に判断する必要があります。
5. 上唇小帯切除術
上の前歯の間にある上唇小帯が大きく発達している場合、それが原因ですきっ歯になることがあります。麻酔を行い、メスやレーザーで小帯を切除して動きを抑えることで、矯正治療などの効果を高めることができます。
治療法選択のポイントとは
治療法選択のポイントとしてこれらを基準に選びましょう。
- 隙間がどれくらい大きいのか
- 自然な見た目を希望するのか
- 歯周組織の健康状態は問題ないか
- 料金や治療期間に重きを置きたいのか
小さい隙間ならダイレクトボンディングやラミネートベニア、大きい場合は矯正治療が良いでしょう。審美性を重視するなら、マウスピース矯正やラミネートベニアがおすすめです。ただし、虫歯や歯周病がある歯周組織は、優先的にそれらの治療を行わなければなりません。矯正は時間がかかりますが根本的な改善が可能ですし、ダイレクトボンディングは短期間で低コストですが経年劣化が起こります。
自分で治すことはできる?
インターネット上で歯をゴムで巻けばすき間が簡単に閉じるという情報を見かけることがあります。例えば「ゴムで留めて毎日締めれば、短期間でキレイになるよ!」という動画を見たことはありませんか。実際には、その部分の隙間が閉じたことで、他の場所に新たな隙間ができてしまったり、無理な力で歯がぐらつき、最悪の場合には歯が抜けてしまうこともあります。歯並び全体がねじれてしまい、元に戻せない深刻な状態になるリスクも起こり得ます。
どうにか自分で治したいという気持ちはとても理解できますが、大切な歯を一生守るためには、安易な自己流の方法ではなく、科学的に裏付けされた治療が必要です。もし少しでも不安があるなら、どうか一人で悩まずに、歯科医院へご相談ください。
まとめ

平成28年の歯科疾患実態調査によると、12〜20歳の若い世代で歯がガタガタの叢生の方が26%、空隙というすきっ歯の方が10%いるという結果が出ています。全世代に当てはめると10人に1人の割合ですきっ歯を抱えている計算になり、見た目の問題、噛み合わせや発音、口腔清掃のしやすさなど、生活全体に影響を与えると実感しています。当院ではできるだけ長い改善を目指して、矯正治療やセラミック治療をご提案していますが、時間的にお急ぎの方にはダイレクトボンディングという即日で見た目を整えられる方法もご用意しています。これまでの経験を生かし、患者さんの状況に合わせた最適な方法をご提案していますので、どうぞお気軽にご相談ください。